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  • 永田 恭介

    筑波大学長

    永田 恭介

     スポーツの効用は身体機能の向上だけではありません。チームワーク形成を通じたコミュニケーション力・組織力の育成、加えてスポーツマンシップの理解を通じた倫理観の涵養など心身両面での教育的な価値はすでに体育という言葉で広く認められています。それだけではなく、スポーツのエンターテイメント性は人や社会を活性化するものです。これからの社会にとって、こうしたスポーツの価値を普及し、より高めていく必要があります。

     大学という高等教育機関にスポーツが必要なのでしょうか?スポーツは様々な科学技術の発展に支えられています。つまり、スポーツ科学は総合科学なのです。たとえば、アンチ・ドーピングの考え方と関連する技術革新を進めるためには、スポーツ・スポーツ科学に携わるものだけではなく、医学健康領域の研究者、検査の全自動化を実現するロボットテクノロジーなどの技術開発に関わる研究者、加えて人文学・社会科学の分野の研究者も必要です。同様に、高いパフォーマンスにとって欠くことができないフィジカルとメンタルの統合的な調和などの基本原理の解明とそれに根ざした実践への適用についても、分野を超えた学際的な取組が必要です。こうした事例はほかにもたくさんあります。総合科学に支えられたスポーツは、人間が人間らしく生きていくために重要なアイデアを生み出してくれます。

     大学スポーツの未来に向けて、アスレチックデパートメント(AD)の創設に向けてAD設置準備室を本年8月1日に立ち上げました。そのトップに、「餅は餅屋」にということから、「アンダーアーマー」の日本総代理店である株式会社ドームの安田秀一代表取締役を招聘いたしました。ADそのものを日本は未経験です。ADの主な使命は、スポーツに関わる学生、教職員、コーチ・監督が学業や業務にもスポーツにも安心して安全に、できれば快適に励むことができるように環境を整えることであり、未来に向けて様々な課題にチャレッンジすることです。スポーツの価値を活用し、総合科学に支えられたスポーツの異次元的発展を推進する旗手として、今後の本学および我が国の大学スポーツ改革を牽引していくことを大いに期待しています。

    筑波大学長 永田恭介
    2017年10月10日(53年前の東京オリンピック開会式を想い)
  • 安田 秀一

    筑波大学アスレチックデパートメント設置準備室長

    安田 秀一

    国立大学法人筑波大学国際産学連携本部の客員教授を拝命し、アスレチックデパートメント設置準備室を担当いたします安田秀一でございます。

    この準備室は、文字通り、日本の大学における初めてのアスレチックデパートメント設置に向けたあらゆる準備を行う部署であり、筑波大学における産学連携機関の一部として同じく、本日付で発足いたしました。
    この準備室において、私はTransitional Director of Athletics(TDA)、日本語に訳せば暫定アスレチックデパートメント局長という役職を担うことになります。
    私の役職の説明をする前に、アスレチックデパートメント設置の目的や意義などを定義させて頂きます。
    まず目的を以下に記します。

    「大学スポーツのイノベーション」
    その中身として;
    ・大学スポーツが安全に正しく行われること
    ・現在の大学スポーツの持つ課題解決を目指し、眠っている価値をアクティベートすること
    ・他大学における同様の課題を解決するモデルケースになること
    ・学生たちが努力・奮闘する場が、より広い社会的な支持を得ること
    ・産学連携による経済的な支援を背景に、家庭環境に関わらず大学でスポーツを行う機会が提供されること
    ・スポーツが筑波大学の理念を体現し、社会に発信すること
    ・日本の未来を支える立派な若者が育つこと
    という事柄を考えております。

    我が国における大学スポーツは、戦後の歴史的背景から現在に至るまで「自治活動」であり、「課外活動」であるという位置づけで、社会的なステイタスとしては飽くまでも「任意団体」としてその活動を行っております。しかしながら、この「任意団体」というステイタスは、大学内で大学の持つ多大なるリソースを用いることで成り立っていること、大きな大会では数万人の観客を集める興行を行っていること、あるいは文化的な側面から見ても、その実態とは整合性の取れない状態と言えます。また、任意団体ゆえ、部活動を含む学生生活における事件・事故の責任の所在も不明瞭です。

    他方、筑波大学の看板を背負って勇敢に戦い、その名を日本全国あるいは世界に轟かせるスポーツの発信力を大学側も十分に活用できる状態にもなっておらず、その価値は眠ったままです。本来は大学のシンボルとして、大きな求心力の担い手であり、愛校心の源ともなりうる体育会活動が一般学生、OB・OGを含む大学関係者から十分な認知・理解があるとは言えない状況で、それに従い大学側も十分なサポート体制を作れておりません。

    近年のスポーツはあらゆる分野で、世界レベルで大きな発展を見せており、特に競技側面においての充実は目を見張るものがあります。その背景にあるものは、肉体や栄養、動作という競技を問わず共通する個別要素の専門性が飛躍的に向上していることが挙げられます。筑波大学において、こうした専門分野の研究は世界最先端を行くものでありますが、体育会の活動としてこうした研究成果を横断的に活用する共通フォーマットがないため、個々の部活に個別のノウハウが蓄積されてしまい、そのポテンシャルが眠っている状態といえます。

    これらの課題に対して、アスレチックデパートメントでは、共通する課題やノウハウを集約し一元的に解決することを試みるものです。
    例えば;

    ・任意団体として活動しているチームを大学の正式なプログラムとし、会計や人事などを大学の内部に組み込むこと。その上で、アスレチックデパートメントが外部資金を集め、活動費を拠出し、事件事故対策として学生の安全管理体制をバックアップし、学業サポートやコンプライアンス体制の確立を目指します。
    ・専門的なマーケティング活動を一括して行うこと。フューチャーブルーは筑波大学の改革精神を表すスクールカラーであり、チーム自体がその筑波大学の建学の理念を雄弁に語る媒体となることを目指します。スポーツの持つ無限の発信力をより専門的な立場からアクティベートし、強力にスクールブランディングを牽引し、スポーツがすべての筑波大学関係者の「誇り」になることを目指します。
    ・チームビルディング、ファンドレイジング、トレーニングや動作解析、栄養サポートなど競技を問わず共通する課題を、チームを横断して共有し、解決する仕組みを作ります。学内にある様々な研究がチーム作りに効率的に活かされることで、競技力や研究成果の向上に寄与する体制作りを目指します。

    更に言えば、大学関係者や、地域住民、筑波大学ファンの方々が、街中で誇らしくフューチャーブルーを身に纏うこと。
    学生たちが安全にスポーツを行い、学業における成果も上げ、文武両道の「カッコいい」若者たちが筑波大学からどんどん輩出されること。
    筑波大学が持つ栄養研究機関が監修するお洒落で機能的なカフェテリアを作り、そこに体育会の学生たちが集い、お互いに刺激し合い、切磋琢磨する環境を整えること… などなどワクワクする未来を広げていきたいと考えています。

    環境を整え、未来を切り拓く。
    すべての大学関係者、地域住民の方々が心躍らせるような施策を打ち、実行できる体制作りを目指したいと考えております。

    また、TDAというポジションについてですが、暫定的に、正規のアスレチックディレクター就任までにこうした体制を整えることがその役割となります。そして、この体制自体が米国の大学スポーツ、全米大学体育協会(NCAA)研究の第一人者である松元剛准教授が長きにわたり研究してきた内容を具現化したものという点においても、筑波大学らしい画期的な取り組みであると考えております。具体的に申しますと、昨年テンプル大学との産学連携による「日本の大学におけるアスレチックデパートメント設立に向けた理論的枠組みの構築」に関わる共同研究の研究過程において、TDAの概念が生まれ、私がその職に就き、部活動を横断して管轄する新しい仕組みに着手したことになります。

    また、私個人的には、この研究過程において「NCAAとは大学の意志の集合体である」という実態に触れられたことが一番の収穫とも考えております。米国大学スポーツの発展がトップダウンではなくボトムアップで行われてきたことを知り、大学が本来的に持つ奥深い社会的な意義を肌で学ぶことができました。

    そして、筑波大学においても、スポーツの本質的な価値を熟知されている永田恭介学長の類稀なリーダーシップにより「大学スポーツのイノベーション」という意志が明確に打ち出されました。筑波大学は「開かれた大学」であり、「先端校」を目指す大学です。私はこの開学の理念に大いなる感銘を受け、そしてその理念の追求に誠心誠意取り組んでおられる永田学長の「改革」と「挑戦」の精神に敬服し、この大役を引き受ける決意をいたしました。

    「改革と挑戦」
    筑波への移転第一期生であり準備室設置の陣頭指揮を執っていただいた体育センター長・山田幸雄教授を始めとする数々の「挑戦の先輩方」と共に、また日々、学生相手に汗を流されている部長、監督の方々と共に、この新しい挑戦を開かれた議論を通じて、何とか形にしたいと考えております。
    数多くの優秀な学生、OB・OGの方々がいらっしゃる筑波大学を、胸を張って「我が筑波大学」といえるよう、まずは精一杯に学び、皆様に認められるべく、共に汗をかかせていただきたいと思っています。社会に存在するひとりの大人として、改革に向けた挑戦を実行し、学生たちの見本となれるよう頑張ってまいる所存です。

    素晴らしい未来を夢に抱き、夢を力に。

    -IMAGINE THE FUTURE-

    筑波大学アスレチックデパートメント設置準備室長
    安田秀一